外国人社員の採用が進む一方で、現場では「指示が正確に伝わっていない気がする」「報・連・相がうまく機能しないことがある」「日本語力の差によって業務習得に時間がかかってしまう」といった課題が生じることがあります。
こうした課題を解決する手段の一つが、企業内で行う日本語研修です。日本語研修を実施すると、どのような効果が期待できるのでしょうか。
本記事では、外国人社員に日本語研修を導入する効果や、成果を出すためのポイント、研修成果の可視化方法、成功事例、早期戦力化につなげるための工夫について解説します。本記事でご紹介するポイントや事例を参考に、自社に合った日本語研修を実施しましょう。
この記事で分かること
- 外国人社員向け日本語研修に期待できる効果
- 効果的な日本語研修を実施するためのポイント
- 外国人社員を早期に即戦力化するためのポイント
目次
日本語研修とは?
日本語研修とは、企業が雇用している外国人社員に向けて行う、日本語教育のための研修です。
日本語研修では「読む・書く・聞く・話す」といった日本語の基礎や日常的な日本語だけではなく、ビジネス日本語や業務で使う表現、日本特有の商習慣や業界特有のルール・文化なども学ぶことができます。例えば、業界や業種ごとの専門用語をはじめ、顧客対応、安全確認、「報・連・相」といったビジネスコミュニケーションについて学べるのが特徴です。
日本語を教えるには一定のノウハウが必要となります。
そこで活用しやすいのが、外部の日本語研修サービスです。多くの企業では、日本語研修サービスを導入して、日本語研修を実施しています。
外国人社員に対する日本語研修の導入に期待できる効果
外国人社員に対する日本語研修に期待できる効果には、どのようなものがあるのでしょうか。4つの効果を解説します。
日本語教育による業務効率の向上とミスマッチ・ミスの削減
日本語研修を導入すると、外国人社員の日本語力、そして業務効率が向上し、指示の聞き間違い、確認不足によるミスの削減といった点で効果があるでしょう。
また、外国人社員が日本語を使いこなせるようになれば、社員同士の意思疎通がしやすくなるでしょう。
職場独自の表現や専門用語への理解が進むことで、本来の能力を発揮しやすくなることもメリットです。
また業務上の指示や専門用語への理解が深まると、内容を正しく受け取れるようになり、不明点も質問しやすくなるため、認識違いによるミスも減らせます。
業務効率が向上し、ミスを削減できれば、社内全体の生産性向上にもつながるでしょう。
コミュニケーションの改善
日本語研修の導入は、コミュニケーションの改善にも効果が期待できます。
日本語でのやり取りに慣れることで、業務中はもちろん、業務外でも会話が円滑にできるようになります。会話が活性化されることで外国人社員も意見を出しやすくなり、社内でのやり取りもスムーズになるでしょう。
また業務時間外の雑談にも加わりやすくなり、社員同士の距離が縮まる効果も期待できます。こうした積み重ねによって、社内全体の雰囲気がよくなる場合もあるでしょう。
組織への定着率(リテンション)の向上
外国人社員の定着率を高められることも、日本語研修導入によるメリットです。
日本語への理解不足によってミスが増えたり、本来の力を発揮しにくくなったりすると、仕事へのモチベーションが下がってしまうことがあります。
その結果、より自分の力を活かせる環境を求めて、離職につながるケースも見られます。
また、社内でのコミュニケーションがうまく取れず孤立感を感じ、それが離職のきっかけになることもあるかもしれません。
日本語研修によって本来の能力を発揮しやすい環境が整い、他の社員ともコミュニケーションを取りやすくなれば、定着率の向上が期待できます。
また会社が日本語教育の機会を提供することで、外国人社員の帰属意識が高まりやすくなります。「この会社に貢献したい」という気持ちが生まれやすくなるのも、大きなメリットです。
日本特有の文化への理解促進
日本独自の文化、業界・企業ごとのルールや価値観への理解を深められることも、日本語研修を導入するメリットです。
日本には独自の商習慣やマナーがあり、業界や企業ごとに特有の文化やルールが根付いていることも多くあります。
日本語を高いレベルで習得している外国人社員であっても、こうした文化的背景への理解を深めることで、よりスムーズなコミュニケーションが取れるようになり、自身の能力をさらに発揮しやすくなるでしょう。
日本語研修の中で、文化的背景や職場で期待される行動を学ぶことで、外国人社員がビジネスパーソンとして活躍する土台を整えることにつながるでしょう。
- 現場で求められる「実践的な日本語力」の把握
- 学習者のバックグラウンドを考慮した計画
- JLPTやBJTなど客観的な指標の活用
効果的な日本語研修を行うためのポイント
効果的な日本語研修を行うには、これからご紹介する3つのポイントを押さえておきましょう。
現場で求められる「実践的な日本語力」の把握
まず大切なのは、現場で実際に使える日本語力を把握することです。
業務の中では、はっきりしない言い方や、背景を知らないと意味が伝わりにくい言葉を、気づかないうちに使っていることが多くあります。
まずは現場で必要な言葉や表現を洗い出す必要があります。また暗黙の了解になっている内容も言語化し、外国人社員にどの程度の日本語スキルを身に付けてもらう必要があるのかを整理しましょう。
現場で求められる実践的な日本語力を明確にしておくことで、日本語研修のカリキュラムや目標も設計しやすくなります。
漢字圏・非漢字圏など学習者のバックグラウンドを考慮した計画
漢字圏・非漢字圏など、学習者のバックグラウンドを踏まえた研修計画を立てることも重要です。
漢字圏の外国人社員は、非漢字圏の学習者に比べて、漢字学習にかかる時間を抑えやすい傾向にあります。ただし、文字情報に頼らない「話す・聞く」といったスキルの習得には、時間がかかるかもしれません。また、同じ漢字でも意味が異なることがあるので、こうした部分は、研修で丁寧に扱う必要があるでしょう。
一方、非漢字圏の外国人社員は、読み・書きの理解にも時間がかかりやすい傾向にあります。入社時の日本語レベルにもよりますが、漢字圏の学習者よりも学習時間を十分に確保しなければならないケースが一般的です。
同じ外国人社員でも、母語や学習経験によってつまずきやすい部分は異なるため、バックグラウンドに合わせた研修計画が必要不可欠です。
JLPTやBJTなど客観的な指標の活用
効果的な日本語研修を行うには、JLPT(日本語能力試験)やBJT(BJTビジネス日本語能力テスト)といった客観的な指標も活用しましょう。
JLPTは、読み書きを中心とした日本語力を確認するための試験です。一方、BJTは、ビジネスシーンで求められる日本語力を測定する試験です。これらを指標として取り入れることで、研修受講者の現在の日本語レベルを客観的に把握しやすくなります。
受講者のレベルを把握できれば、研修の目標やカリキュラムも設計しやすくなるので、より効果的な日本語研修につなげられるでしょう。
日本語研修の成果を可視化・判定する手段
ところで、日本語研修の成果を可視化・判定するためには、どのような手法を活用すればよいのでしょうか。ここで、3つの手段を解説します。
ポートフォリオを活用した学習プロセスの蓄積
ポートフォリオとは、学習者の成果物や学習記録を蓄積する方法です。
日本語研修では、作成したメール文や業務日報、ロールプレイの振り返り、講師からのフィードバックなどを記録します。日本語力の習熟度は、数値だけでは見極めにくい部分がありますが、成果物や学習記録を残しておくと、中長期的な成長を確認しやすくなるでしょう。
学習プロセスが見える形で蓄積されるので、指導者も個別の課題に応じたサポートが行いやすくなります。
現場からのフィードバックとアンケートの併用
日本語研修の成果を判断するには、講師や本人の評価だけではなく、現場からのフィードバックも重要です。
一緒に働く日本人社員に対して「指示理解がスムーズになったか」「報告の頻度が増えたか」「ミスコミュニケーションが減ったか」といった観点で確認すると、実務での変化を把握しやすくなります。
また外国人社員本人へのアンケートも効果的です。「研修内容が実務で使えたか」「レベルは自分に合っているか」といった内容を確認すると、研修内容の見直しにも役立ちます。
講師・現場・本人の声をバランスよく取り入れることで、より実務に合った日本語研修に改善できるでしょう。
外国人社員に対する日本語研修の成功事例
ここからは、アークアカデミーの日本語研修サービスを導入し、日本語教育を行った企業さまの成功事例をご紹介します。
現場で使える日本語教育により、接客対応を強化
ある企業では、日本での生活経験がない外国人スタッフの受け入れを行っています。しかし、日本の企業文化や接客時のふるまいを社内の力だけで外国人社員に十分に教えることは難しく、特にお客さま対応に必要な言葉遣いやマナーを実務レベルで定着させることに課題がありました。
そこで、接客やおもてなしで役立つ日本語を学ぶ派遣型の研修と、JLPT対策を行うオンライン型のグループ研修を組み合わせた、カスタマイズ型プログラムを導入しました。
業務場面に合わせて研修を設計したことで、受講者は敬語表現や接客時の所作への不安を軽減し、顧客とのやり取りにも前向きに日本語を使えるようになりました。また日本人社員との意思疎通が円滑になり、チーム内の連携も向上しています。新しく入社した外国人社員が早期に職場になじめるような、環境の整備にもつながった、とのことです。
介護現場向けの日本語支援で資格取得までを後押し
ある介護施設では、外国人社員の日本語学習について、施設として支援する体制が十分に整っていませんでした。
また職員の出身国が多様なため、教材選定や指導方法のノウハウがない状態だったとのことです。
そこで、介護現場で使う日本語とJLPT対策を行う出張レッスンを導入したところ、学ぶべき内容が整理されたとのことです。また、外国人介護士の学習意欲も高まり、実際にJLPT合格、という成果も出ています。
業務で必要な日本語力を伸ばす日本語研修の導入
ある企業では、外国人社員を対象に、ビジネスシーンで使える日本語研修を実施しました。
研修では「話す・聞く」といった会話でのビジネス日本語力を強化するとともに、日本語の文章を理解できるようになることも目的としました。 業務で必要な日本語力を伸ばすことで、実務でのやり取りをよりスムーズに進めやすくなるでしょう。
外国人社員をできるだけ早く即戦力化するためのポイント
外国人社員にできるだけ早く即戦力として活躍してもらうには、日本語研修の進め方を工夫することが大切です。
最後に、外国人社員の早期活躍につなげるために押さえておきたい、日本語研修のポイントを解説します。
「報・連・相」や業界用語に特化した実践的ロールプレイ
外国人社員をできるだけ早く即戦力化するには「報・連・相」などの日本のビジネスルールや、業界用語に特化した実践的なロールプレイを行うことが大切です。
実務で発生するフローに基づいてロールプレイを行うことで、実際の業務でも対応しやすくなります。「報・連・相」だけではなく、業務内容に応じた指示の受け方や情報共有の方法などを取り入れることで、現場で必要なコミュニケーションを効率よく身に付けられるでしょう。
また業界用語への理解が深まれば、業務内容を把握しやすくなります。その結果、外国人社員が本来の能力を発揮しやすくなるでしょう。
語学力向上を「処遇」に反映させる人事制度の設計
語学力の向上を「処遇」に反映させる人事制度の設計も、外国人社員に早期のうちから即戦力として活躍してもらうためには欠かせません。
日本語力を高めるには、継続的に学習するためのモチベーションが必要です。日本語の習熟度や目標の達成度合いを人事評価に含めることで、学習への意欲が高まりやすくなります。「早く昇給・昇格したい」という気持ちが生まれれば、日本語学習にも積極的に取り組みやすくなるでしょう。
またどのレベルに達すると、どのようなキャリアパスがあるのかを提示すると、将来へのモチベーションがさらに高まります。
日本人社員も巻き込んだ社内の教育文化づくり
外国人社員をできるだけ早く即戦力化するには、日本人社員側の理解や協力も欠かせません。
日本人社員も巻き込みながら、日本語が学びやすい協力的な教育文化を社内で育てていくことで、外国人社員へのサポートがしやすくなります。交流会や勉強会を実施し、お互いの文化の違いを理解することも大切です。
外国人社員が働きやすい環境を整えることは、日本人社員にとって負担軽減や業務効率化などのメリットがあります。
まとめ
外国人社員に対する日本語研修を実施すると、単に外国人社員の日本語力が高まるだけではなく、業務効率の向上やミスコミュニケーションの削減、社内コミュニケーションの活性化、定着率の向上など、企業全体への多くの効果が期待できます。
日本語研修は単なる教育ではなく、企業全体の生産性向上にも影響する重要な取り組みです。成功事例でも分かるように、現場の課題に応じた設計が成果を左右する鍵となります。
ご紹介したポイントを参考に、効果的かつ即戦力化につながる日本語研修を行い、定期的に成果を測定しながら、よりよい研修へとアップデートしていきましょう。
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