さまざまな業界で人材不足が課題となっている今、その解決策として外国人社員を雇用する企業が増えています。しかしその一方で「採用したものの社員が定着しない」と、頭を抱えている企業も少なくありません。外国人社員の離職を防ぐには、どのような対策が必要なのでしょうか。
本記事では、外国人社員が離職する主な原因や、日本語研修が定着に与える影響について解説します。日本語研修と併せて取り組みたい施策の例も紹介するので、外国人社員が長く働ける環境づくりの参考にしてみてください。
この記事で分かること
- 外国人社員が離職してしまう代表的な理由
- 日本語研修が外国人社員の定着にもたらすよい影響
- 日本語研修以外に取り入れたい定着率向上のための取り組み
目次
外国人社員の離職を防止するには?
グローバル人材の採用支援などを行う株式会社エイムソウル、ヒューマングローバルタレント株式会社、リフト株式会社の3社が2021年に実施した共同調査によると、日本で働く外国人のうち28%は、入社後1年以内の離職を経験しています(※1)。また出入国在留管理庁の資料によると、2022年11月末時点における特定技能外国人のうち、自己都合で離職した人の割合は16.1%でした(※2)。
採用にはコストや時間がかかるので、早期離職の発生は企業にとって大きな損失となります。そうした中、離職防止の取り組みの一つとして、多くの企業が導入を進めているのが日本語研修です。
【参考・出典】
※1 CQI「日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査」(参照2026-05-15)
※2 出入国在留管理庁「特定技能制度の現状について」(参照2026-05-15)
外国人社員への日本語教育の重要性
外国人社員への日本語教育が重視されている背景には、言葉の壁があります。
どれだけ高いスキルを持っている外国人社員でも、日本語を公用語とする環境で十分に能力を発揮するには、一定の日本語力が求められるでしょう。日本語を十分に使いこなせない場合、外国人社員本人が困るだけではなく、日本人社員にとっても負担が増大する恐れがあります。危険度が高い職場なら、コミュニケーションをきちんと取れなければ、安全面に不安が生じるのは避けられません。
もちろん、日本語研修だけで全ての課題を解決できるわけではありません。しかし離職をはじめとしたさまざまな課題を改善していくためには、日本語教育の重要性を理解し、継続的に取り組むことが大切です。
外国人社員が離職してしまう主な原因
それでは、外国人社員が離職してしまう原因にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的な原因を4つ解説します。
他社員とのコミュニケーションのハードル
日本語を公用語とする職場では、外国人社員の母国語を話せる社員が全くいないケースも珍しくありません。そのため、外国人社員自身が日本語を十分に話せない場合、社内で円滑にコミュニケーションを取ることが難しくなります。
業務の指示が理解できない、質問や相談がうまくできない、日常的な雑談もままならない──こうした状態が続くと、不安やストレスを感じやすくなります。
文化や職場環境の違いによるストレス
国によって文化や価値観が異なるのは当然のことですが、日本人にとって当たり前の感覚でも、外国人社員にとっては理解しづらく負担になることがあります。例えば、日本には率直に表現せず相手の意図を汲み取る文化がありますが、言葉の意味をそのまま受け取る文化圏の外国人社員にとっては、全く理解ができず「コミュニケーションが難しい」と感じる原因になるかもしれません。
また日本人や職場内では暗黙の了解となっているルールや考え方が伝わっておらず、認識のズレからトラブルに発展するケースもあるでしょう。
逆に自分の文化や価値観を理解してもらえないことに、ストレスを感じる外国人社員もいます。例えば、宗教上の礼拝時間の確保や食事制限などは、配慮が求められるポイントです。
評価やキャリアが見えにくいという不安
昇給・昇格制度や評価基準が不透明な場合「自分は正当に評価されているのだろうか」と不安を感じやすくなります。また将来のキャリアパスが具体的に示されていないと、今後どのように働いていけるのかがイメージしづらくなり、より将来性を感じられる職場を求めて離職につながることもあります。
孤立やサポート不足による不満
前述したようなコミュニケーションのハードルがあると、社内で孤立しやすくなります。日本語を十分に使いこなせない場合は、職場だけでなく日常生活でも孤立感を抱えやすくなるでしょう。その結果、帰国を理由とした離職を検討するケースも考えられます。
また企業からのサポートが業務面・生活面ともに不足していると感じれば、より働きやすい環境を求めて離職を選ぶ人も出てくるでしょう。
日本語研修が外国人社員の定着に与える影響
では、日本語研修を実施すると、外国人社員の定着にどのような影響があるのでしょうか。主な効果を3つ紹介します。
職場でのコミュニケーションがスムーズになる
外国人社員が日本語を使いこなせるようになると、社内でのコミュニケーションがスムーズになります。同僚とのチームワークが築かれ、業務上のやり取りも円滑に進めやすくなるでしょう。何気ない日常会話にも参加しやすくなるので、孤立感の軽減にも効果が期待できます。
仕事への理解が深まりミスが減る
日本語や専門用語への理解不足や認識のズレは、業務上のさまざまなミスを引き起こす要因です。中にはミスが続くことで、自信を失ってしまう外国人社員もいるでしょう。
日本語研修では、日本語そのものだけではなく、日本独自の商習慣や企業内のビジネスマナーについても学べる場合があります。業務への理解が深まり、よりスムーズに仕事へ取り組みやすくなります。
安心感が生まれ定着率の向上につながる
コミュニケーションが円滑になり、ミスが減ることで、外国人社員は安心して仕事ができるようになります。本来の能力を発揮しやすくなるので、仕事へのモチベーションも向上するでしょう。
また企業が日本語研修の体制を整えていること自体が「会社は自分をサポートしてくれている」という安心感や信頼感につながります。外国人社員にとって働きやすい職場環境になれば、長く活躍してもらえる可能性が高まるでしょう。
外国人社員の定着のために企業が取り入れたい日本語研修のポイント
企業が日本語研修を取り入れる際は、次の3つのポイントを押さえておきましょう。
業務に直結した実践的な内容にする
企業で実施する日本語研修は、単に日本語力を高めることだけを目的とすべきではありません。業界特有の専門用語や業務で使用する表現、日本独自のビジネスマナー、自社特有のルールなども含めて学ぶことで、実務で役立つ日本語力を身に付けやすくなります。電話対応や顧客対応などは、ロールプレイやOJT形式を取り入れることで、より実践的に学ぶことが可能です。
また学んだ内容をすぐに業務へ生かせると、業務効率の改善が目指せるだけではなく、学習へのモチベーション向上も期待できるでしょう。
現場のコミュニケーション改善を目的に設計する
外国語に慣れていない日本人が、学んだ言葉を話すことへ戸惑いを感じるように、外国人社員も、座学だけで日本語を自然に話せるようになるとは限りません。実際に会話や質問をする練習などを取り入れ、日本語でのコミュニケーションに慣れていける内容にすることが重要です。
また日本では当たり前とされている「報・連・相」についても、外国人社員には伝わりにくいことがあります。事例などを交えながら、日本特有のコミュニケーション文化への理解を深めてもらうことも必要でしょう。
継続的に学べる環境を整える
日本語に限らず、語学を流ちょうに使いこなせるようになるまでには、一定の時間がかかります。そのため入社時だけ一時的に日本語研修を行うのではなく、継続的に学べる機会を用意することが大切です。実際に日本語を使って会話できる場を設けながら、フォローアップ研修や定期的な習熟度チェック、個々のレベルに合わせたサポートなどを行うことで、学習を続けやすい環境を整えられます。
またマンツーマンのオンライン研修を取り入れたり、学習の継続状況や習熟度を人事評価へ反映したりする工夫も効果的です。
外国人社員の定着率をさらに高めるために、企業ができる日本語研修以外の取り組み
最後に、日本語研修以外に取り入れたい離職対策の例を3つご紹介します。
多文化への理解を深める職場づくり
外国人社員に日本の文化や働き方を理解してもらうことは大切ですが、日本人社員側もさまざまな文化や価値観を理解しようとする姿勢が必要です。日本の文化だけを基準にするのではなく、お互いの文化を知ることで、相互理解が進みやすくなります。
多文化理解を深めるには、交流会や勉強会を実施するのが効果的です。業務外で関わる機会を作れば、コミュニケーションも活発になり、風通しのよい職場環境を目指せるでしょう。
働きやすい制度やサポート体制の整備
昇給・昇進制度や評価制度を明確に示すことで、仕事へのモチベーションが向上しやすくなります。「この職場で長く働きたい」と感じやすくなるので、定着率の改善が期待できるでしょう。また日本人社員と同じようにキャリアアップへ挑戦できる環境を作ることや、業務に必要な資格取得支援制度を整備することによっても、定着率によい影響を与える可能性があります。
加えて、生活面でのサポートも欠かせません。入社前後の行政手続きや金融機関での手続きの支援、日本での生活ルールに関する研修、医療面でのサポート、一時帰国の機会提供など、生活全般を支援することで、企業への信頼感につながりやすくなります。その結果、安心して働ける環境が整い、定着に結び付くでしょう。
現場と連携した受け入れ体制の強化
いくら日本語研修や制度整備を進めても、現場で十分な理解が得られていなければ、業務がうまく進まなかったり外国人社員が孤立してしまったりする可能性があります。そのため日本人社員に対しても、外国人社員への指導方法や情報共有の進め方などを周知し、チームで支え合える環境を整えることが大切です。入社時の社内研修に現場社員が参加したり、メンター制度を導入したりするのも効果的です。
加えて入社後も定期的にヒアリングやアンケートを実施し、相談窓口を設置することで、課題を把握しやすくなります。必要に応じて改善へ取り組むことで、より働きやすい環境づくりができ、定着率も向上するはずです。
まとめ
外国人社員が離職する背景には、日本人社員とのコミュニケーションの難しさ、文化や価値観の違い、評価・キャリアの不透明さ、孤立や生活面の不安などがあります。日本語研修を導入するだけで定着率が改善するわけではありませんが、コミュニケーション上の課題が改善することで、外国人社員が自信を持って働きやすくなり、職場への安心感が生まれます。
また適切な日本語研修は、現場でのミスやトラブルの防止、生産性向上、チーム連携の強化にも効果が期待できます。定着率向上だけではなく、採用・教育コストの削減にもつながるはずです。
日本語研修に加え、多文化理解を深める職場づくりや働きやすい制度の整備、現場での受け入れ体制の強化にも取り組み、外国人社員が長く活躍できる環境を整えましょう。
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